【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 言い放つと同時に私は岸の手を取って部屋を出ようとする。


 すると、当然ながら止められた。

 進行方向に私達を連れてきた男が立ちふさがる。


「まあ、予想はついてたが……。行かせるわけにはいかねぇよな」

 苦笑じみた様子の男だったけれど、絶対に通さないという意志は感じ取れた。


「その“花嫁”もどきは戦えないから、二対一。岸、あなたにはどうにもできないわよ?」

 諦めたら? とシェリーが笑う。


 悔しいけれど彼女の言うとおりだった。

 護身術程度は身に着けたとはいえ、吸血鬼である彼女達に私が敵うわけがない。


 岸がどちらかを相手している間に、もう片方に捕まってしまうのがオチだ。

 でも――。

「諦めることだけは出来ないよ」

 そう言って、岸の手をギュッと掴んだ。


「んとに……わがままな“唯一”だよな」

 苦笑気味に文句を言われたけれど、岸は私の手を握り返し頭にキスをしてくれる。

「でもそういう強さが、俺の心を震わせるんだ」

 そうして手を離し、私を背にかばう様に前へ出た。


「とりあえず、やってみるしかねぇだろう?」

「無謀だな」

 男はため息をつきつつ、岸の相手をするために構える。


「聖良、俺から出来る限り離れるなよ?」

「うんっ」

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