【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
でも男の方も決定打に欠けていたから、根気よく注視していた。
そして、先に隙を見せてしまったのは岸の方。
「っくっ!」
攻撃を避けた拍子にバランスを崩してしまった。
そこへ、男がナイフを持った手を私達に向ける。
「ダメッ!」
私はとっさに叫んで、男の手を弾こうと自分の腕を伸ばしてしまった。
バシッ!
伸ばした腕はナイフに傷つけられることはない。
なぜなら、男はナイフを持っていない方の手で私の腕を掴んでいたから。
「っ⁉」
「っおい!」
私が息を呑み、岸が怒りと焦りを含んだような声を上げたと思った次の瞬間。
ぐんっと私の体は岸から離れ投げ飛ばされた。
「きゃあぁぁ!」
叩きつけられたわけじゃないから落ちた痛みはあまりなかったけれど、勢いで数メートル引きずった。
引きずった痛みに「うぅ……」と呻いていると、上から頭を押さえつけられる。
「だから無謀だって言ったでしょう?」
嘲笑と共にその言葉が降ってきた。
髪を掴むように押さえられていたからかなり痛い。
でも、だからって大人しく捕まっているわけにもいかなくて……。
痛みに耐えながら少しでもと暴れると、何とか顔の方向だけは変えられた。
でも、そうして目に飛び込んできた光景は――。
「ぅぐふっ!」