【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 その途中で、ドォン! と屋敷中に響いたんじゃないかと思うほどの大きな音がする。

「な、なに⁉」

 動揺するシェリー。

 でも、男の方は「あーあ……」なんて声をもらして諦めに似た表情をしていた。

 そしてメールか何かでも来たんだろうか。

 男はスマホを出してしばらく画面を見つめていた。


「何? どうしたっていうの?」

 スマホをしまった男に硬い声でシェリーは問いかける。

 そんな彼女に、男は仕方がないといった様子で語った。


「計画は失敗だと。本物の“花嫁”は奪い返されたそうだ」

 それを聞いて私はこんな状況だけど少しだけホッとする。


 少なくとも愛良は無事に救出されたってことだ。

 大好きな親友の姿が脳裏によみがえる。


 ありがとう、嘉輪。


 嘉輪だけじゃなく当然零士もいるだろうけれど、私の願いを叶えてくれた友人に感謝する。


 すると、髪を引っ張られ無理矢理上半身を起こされた。

「くっ、いたっ」

「じゃあ、この子をさっさと連れて行かないとね」

 シェリーの言葉に体がこわばる。


 そうだ。
 愛良が救出されたのなら次に狙われるのは私。

 今の状況はとても良くない。

 岸は動けず、私はシェリーの手の中だ。


「いや……」

 でも、男の方はシェリーの言葉を否定する。

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