【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「そっちの“花嫁”もここに放置だ。お前とともにな、シェリー」

「……どういうこと?」

 二人の間に不穏な空気が流れた。

「“純血の姫”はそいつがここにいることにすぐ気づくだろう。連れて逃げることは出来ない」

「じゃあ、私も一緒というのは?」

「“花嫁”を奪った罪をすべてお前にかぶせることにしたらしい。……捨てられたな」

 男はそう言って、やっぱり仕方のなさそうな笑みを浮かべる。

 対するシェリーは激高した。


「捨てられたですって⁉ あの人が私を捨てるなんてありえないわ!」

「だろうな。御当主はそうだろう……だが、その周りは違う」

「っ! まさか彼に黙って……⁉」

「そういうことだ。御当主が知るころには、お前は真犯人に仕立て上げられてるだろうな」

 男は淡々と説明している。

 シェリーは動揺したためか、私の髪を掴む手の力を緩めた。


 今なら抜け出せる?

 そう思って動こうとした瞬間、今度は後頭部を鷲掴むように捕まる。

「うっ!」

 強い力に顔が歪む。


「っ冗談じゃないわ! 私とあの人を引き離そうなんて!」

「まあ、俺も一人の吸血鬼として“唯一”同士を引き離そうとするのは忍びないけどな……。それこそ老害には何を言っても無駄ってやつだ」

 取り乱すシェリーと違ってあくまで淡々と話す男。

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