【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 それがいやに長く感じた。


 思えば、私は岸以外に血を吸われたことが無い。

 私は岸の“唯一”だから、今までは少ない量しか吸われなかった。

 だから長く感じるのかと思っていたけど……。


「ぐっ、シェリー! もうやめろ! それ以上は!」

 必死な様子の岸の声が聞こえる。

 その直後辺り……突然スッと熱が無くなった。


 熱くない。

 ううん、むしろ――。


「さむ、い……?」

 呟くと、ダダダン! と大きな足音が聞こえてきた。

「聖良⁉」

 続けて、悲痛な甲高い声が耳に届く。


 ……嘉輪?
 来て、くれたの……?


 考えるのが億劫になってきた頭で、それだけを思う。

 すると、やっとシェリーが私を離した。


 体に力が入らなくて、ズルリと落ちるように倒れる。

「聖良ぁ!」

 叫びながら岸が近くに来てくれる。

 今度はシェリーも蹴ったりはしなかった。


「っくそ! 止血しやがれ!」

 私を抱き起こした岸は悪態をつくと、首筋に顔を寄せ血を舐めとってくれる。

 そうして出血が止まっても、寒さと冷や汗が出るような感覚が無くならない。


「止血? いらないでしょう? どうせ死ぬのに」

 恐ろしほどに冷たい声が落ちる。

 その言葉そのものが、また私の体を冷たくするような気がした。


 死ぬ?


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