【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

主従の契約

 夢を見た。


 真っ白な世界が、赤黒く塗りつぶされていく夢。

 徐々に暗くなる世界。


 でも、不思議と恐怖は感じなかった。


 なぜなら、目の前でずっと一人の少女が優しく笑って私を見ていたから。

 愛良と同じくらいの年齢。

 そう思ったら、見た目も愛良に似ている様に見えてきた。


 赤黒く染まった世界で微笑む少女は、私に白く光る欠けた球体を差し出してくる。

 良く分からないまでもそれを受け取ると、その球体は私の中に吸い込まれた。


 ふと気づくと、少女の姿も消え失せていた……。



***


 (まぶた)が上がる。

 少しボーッとしてから、やっと意識も追いついてきた。

 少しずつ、考える力も戻ってくる。


 ここ、私の部屋?

 私、どうしたんだっけ……?


 直前まで夢を見ていたせいもあって記憶があやふやだ。

 だから一つ一つ思い起こす。


 確か、そう。学校帰りに岸が迎えに来てくれたんだ。

 会いたいと思っていた相手。

 会えた喜びと、みんなへの罪悪感は今でも思い出せる。


 そして、月原家の男に連れられて別邸に行き、シェリーと再会した。

 そのまま戦闘になって、どういうわけかシェリーが月原家に見捨てられて……。

 そうだ。
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