【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 でも、嘉輪の姿もあったから現実だと分かる。


 ……そっか、よかった。
 私、生きてるんだ……。


 二人の顔をちゃんと見ようと首を動かそうとして気づく。

 あれ……?


「動け、ない……?」

 しばらく寝ていたからなのか、かすれた声が口から出た。


「今はまだ吸血鬼になるために血が変化している最中のはずよ。動けないのはそのせいだから、怖がらなくていいわ」

 知らず怯えた声になっていたんだろう。

 嘉輪が優しく教えてくれた。


 そっか……。
 やっぱり私吸血鬼になるんだ。


 忍野君から聞いた通りの方法なら、吸血鬼の血が入れられたってことだ。

 あのときそばにいたのは二人。

 もしかして……。


「私に血を入れたのって……」

 すぐにでも会いたい人の顔が浮かぶ。

 この場にいてくれないのはどうしてなんだろう?


「聖良に血を入れたのは私よ」

 予想に反した答えに「え?」と軽く驚きを見せる。

「本来ならあなたを“唯一”としている岸がやるのが一番良かったんだろうけれど……。でも、彼直前に血を流していたでしょう? あの状態で聖良を吸血鬼にするほどの量を流し込んだら彼の方が死んでしまっていただろうから……」

 説明に納得した。

 私が死ななくても、岸が死んでしまったら意味がない。


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