【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「……その岸は……どこにいるの?」

 最後に見た顔が忘れられない。

 私はちゃんと生きているよって知らせたい。


 でも、それを聞いた途端嘉輪は押し黙った。

 心配そうに私を見ていた愛良も、悲痛な表情になる。


「っお姉ちゃん……。あの人は……」

 愛良は説明してくれようと声を出すけれど、かなり言いづらいことなのかそこから先を言えないようだった。


 何?
 どうしたの?

 嘉輪の話の流れだと、少なくとも死んでしまったとかいうわけじゃないだろうし。

 それとも思ったより傷が深くて後から何かあったとか?


 不安がる私に答えをくれたのは、やっぱり嘉輪だった。

「一応言っておくけど、彼自身に何かあったわけじゃ無いからね?」

「そう、なの?」

「ええ、少なくとも体調が悪くなっているとかではないから。……あなたの事が心配で少し焦燥(しょうそう)しているけれど」

 それを聞いてひとまず安心する。

 でも、二人の様子を見れば良い状況じゃないことはたしかだ。


 続けられる嘉輪の言葉を覚悟を決めるように黙って待つ。

「あの、ね。とても言いづらいのだけど……。岸……彼は……ある街に送られる事が決まったの」

「街?」

「そう……吸血鬼の監獄と呼ばれる区域がある街よ」

「かんごく……?」

 意味が分からない。


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