【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 そう言ってニヤリと笑い、近づいてきた彼の手が私のあごをスルリと撫でる。

 妖しい手の動きに以前試したときのことを思い出し、私はカァッと顔全体を赤くした。



 以前忍野君が血液パックで血を飲んで、気持ち悪そうにしていたことを覚えていた私。

 だから「直接吸っても良いぜ」と言う永人の言葉もあって、直接吸血を試みたんだ。


 初めてのことだからどうすればいいか分からなかったけれど、試しに永人の首筋に顔を近づけてみたら自然と犬歯が伸び始めた。

 皮膚の下にある血流を感じ取り、ああ、ここに咬みつけばいいんだって自然と分かる。


 あとは吸血鬼としての本能に身を任せれば簡単だった。

 咬みつき、溢れ出てきた永人の血は甘くて……。
 人間だった頃に感じた生臭い匂いなんてしなかった。

 ただひたすら甘くて良い香りがして……。
 素直に美味しいと思った。


 そして“唯一”だからなのか、ほんの二口ほどで満足出来る。

 最後に舐めとって、咬み傷を塞ぐ。

 その痕が本当にキスマークみたいで……。

 まるで私が永人にキスマークをつけてしまった様な気分になって、このときやっと恥ずかしさが湧いてきた。


 でも、本当に恥ずかしいのはその後だったんだ。


「永人の血、飲めたよ。これなら私血液パックは必要ないかも……永人?」

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