【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 恥ずかしさを誤魔化すように出来る限り普通の声で伝えると、永人の様子がおかしいことに気づいた。

 何だか苦しそうにも見えて心配になる。


「永人? 大丈夫? もしかして吸いすぎた?」

 でも二口しか飲んでないんだけどな? と疑問に思いながら彼の顔を覗き込む。


「……っはぁ、聖良……」

 目が少し潤み、熱っぽくも見える。

 色気すら出てきそうな熱い吐息と共に私の名を呼んだ永人は、両手を伸ばし私の頬を包む様に掴んだ。


「永人?」

 大丈夫? と続けようとした言葉は彼の妖しい笑みに止められる。


「聖良……これ、ヤベェ……」

「え? これって?」

 何のことか分からなくて聞き返すけれど、ゾクリと私の心を震わせる瞳に何となく嫌な予感がした。


「直接吸血による性的快感だよ。……好きな女に吸血されたら、こんなにクるとは思わなかったぜぇ?」

「え……えと、永人?」

「っはぁ、我慢出来ねぇ」

「んぅっ!」

 言うが早いか、頭を掴まれ逃げられない私は唇を奪われる。

 熱い舌がすぐに私の唇を割って入ってきて、絡め取られた。

 息つく暇もなく翻弄されて、永人の熱が私にも移ってしまったかのよう。


「っは……なが、と……んっ」

 わずかに離れた瞬間に待ってと言おうとするけれど、その言葉を紡ぐ前にまた塞がれる。

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