【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 私は溶けかけていた理性をかき集めて拒絶した。


「永人、ストップ! いくら何でもここではダメ!」

 しっかり“命令”もして、彼を止める。

 だって、今いるのは学園の保健室。
 高峰先生は今はいないけれど、いつ戻って来てもおかしくない状態。


 お互いが承諾している吸血行為ならともかく、永人が望むようなことは流石に出来るような場所じゃない。

 そんなこと永人だって分かっているはずなのに、甘い微笑みを瞬時に怒り交じりの不満顔にしていた。


「聖良ぁ……てめぇ、この状況で止めるとか生殺しじゃねぇか!」

 欲望をその目にまだ宿しながらも、永人は忠実に私の“命令”に従う。
 まあ、契約しているんだから彼の意志とは関係ないんだろうけれど。

「で、でもやっぱりここではダメ!……その、今度……ちゃんと二人きりのときなら、その……」

 言葉の終わりは濁してしまったけれど、二人きりならいいよと暗に伝える。


 元々彼の手を取ったときからそうなっても良いと思っていたから。

 色々あって未だになされてはいないけれど、ちゃんと二人きりのときにそういういい雰囲気になったなら拒む理由はない。


「だから、今は我慢して……?」

 そのお願いが今の永人には酷なことだってのは分かっていたけれど、今はどうしても無理だったからそうお願いする。


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