【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「次直接吸血するときは、邪魔が入らなそうなところでちゃーんと最後までしようぜ。なぁ、聖良?」

 って、色気すら垣間見せてそう誘われた。


 だから、次に直接吸血するってことはそういうことも同時にって意味で……。

 永人が「俺はそっちでも良いんだけどな?」なんて言うのはつまりはそういうことで……。


「な、永人への直接吸血は……その、色々と覚悟が必要だから……」

 意地悪な表情で誘う永人をスルーして、私は忍野君にそう説明した。

 でも私達の様子から何かしらの事情を感じ取った忍野君は……。


「あー、うん。なんとなく分かったよ……まあ、頑張れ」

 と、生ぬるい視線付きで激励の言葉を口にした。


「あ、ははは……」

 もはや私は笑って誤魔化す以外にない。

「とりあえずこれ飲んでみるね」

 と、持っていたグラスを口につける。


 永人の血を直接吸血したときのようないい香りはしない。

 味は落ちるものだと思って、忍野君のように一気に飲んでしまった方がいいかも知れない。

 そう覚悟を決めて、一気にゴクゴクとグラスの血を飲みほした。


 一滴とはいえ永人の血が入っているからか、拒絶するほどの気持ち悪さはない。

 でも、多少の生臭さは感じてしまって……。


「……マズイ」

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