【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 女子寮に戻ったときと学園の中にいるとき以外はもうずっと一緒にいる状態なのに、これ以上常にそばにいるなんて色んな意味で身が持ちそうにない。

 とにかくダメだってことを伝えたかったのに、永人は何故か意味深な笑みを浮かべる。

「ふぅん……集中できなくなるねぇ……。俺がそばにいたらどうして集中できねぇんだ?」

「へ?」

 どうしてそんな妖しい笑みを浮かべるのか分からなくて戸惑う。


「え? だって、気になるし……」

「それだけかぁ?」

 そう続けて聞いて来る永人は、私の髪をひと房すくってその指に絡ませる。

 笑みだけでなく、その仕草にも妖しさと甘さが出てきて不覚にもドキドキしてしまった。


 いやいや、でもここは人目が……。


「もうその話はいいから! ほら、とにかく帰ろう」

 そう促すのに永人は動いてくれなかった。

「俺の質問に答えてからにしろよ……。なぁ、ホントにそれだけなのか?」

 意地悪な顔で迫ってくる永人にいっそ命令してやろうかと思ったけれど……。


 パコン、と小気味の良い音が彼の頭の辺りから聞こえてきた。

 何かと思ったら、永人の陰から呆れ顔の嘉輪がひょっこり顔を出す。


「みんなが反応に困るから校内でのイチャイチャは止めてくださーい」

 そう言って永人の頭を叩いたらしい紙の筒を自分の肩に当てた。

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