【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「チッ……邪魔すんなよ」

 舌打ちと悪態をつく永人。

 でも嘉輪はそれを無視して私をジトリと見た。


「聖良も聖良よ? さっさと“命令”してしまえばいいのに」

「い、今しようとしてたの!」

 言い訳みたいに聞こえると思ったけれど、流されていたわけじゃないと主張する。

 けれど私の言葉にも「はいはい」とテキトーに返事をする嘉輪。


「まあでも丁度良かったわ。話もあるから、一緒に帰りましょう」

 そうして私の主張を聞き流した彼女は、自分のカバンを取ってくるとついてきなさいとばかりに歩き出した。


***

 前を歩いていた嘉輪は校門を出て少ししてから歩調を緩めて私の横に並ぶ。

「……聖良、ごめんね」
「へ? 何、突然」

 いつもより幾分硬い雰囲気だった嘉輪に突然謝られて目をパチパチさせてしまう。


 今日は朝からいつもよりちょっとだけ暗い様子に見えてはいたけれど……。

 まさか謝られるなんて思ってもみなかった。


「いや、仕方なかったとはいえ私の――純血種の血を聖良に入れちゃったでしょう? そのせいで岸と血の契約までしたのに認めない大人たちが出てきてるから……なんか申し訳ないなってのは最近ずっと思ってたんだ……」

 まさかそんな風に考えていたとは思わなくて私は逆に慌ててしまう。

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