【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 それが叶った今はたまにイラっとするニヤニヤ笑いもされるけれど、それでもやっぱりあのときの表情をされるより何倍もマシだ。


 だから、本当に感謝している。
 謝ることなんてない。

 そう伝えた。


「……俺も、そこは感謝してるんだぜ?」

 珍しく永人も嘉輪に感謝の意を示す。

「俺が死んでも聖良を失うよりマシだって思ってたから、聖良に血を入れるのは俺でも良かったと思ってたがよぉ……」

 そこで少し気まずげに視線を逸らす永人。

 もしかして感謝の言葉を口にするのを恥ずかしがっているんだろうか?
 珍しいものを見た。


「でも、聖良が生きて俺が死んだら……こいつの隣には他の男がいたかもしれねぇって思うだけで腹が立つ。だからその……感謝してんだよ」

「岸……」

 永人の珍しい言葉に、嘉輪も目を丸くして驚く。


「……そっか。それなら良かった」

 そう言ってわずかに笑みを浮かべてくれた嘉輪。

 でも、まだ表情が晴れる様子はない。

 どうしたのかと流石に心配になってくる。


「嘉輪?」

 控えめに声を掛けると、困り笑顔が返ってきた。

「それでも、“花嫁”に純血種の血を入れるのはあまり良くない事だったみたいなの」

「え?」

「事情を知ったお父さんから昨日連絡があってね、それは《禁忌》だって言われた」

「禁忌……?」
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