【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「……元婚約者候補だか何だか知らねぇがよぉ。もう関係ねぇんだ、さっさと忘れちまえ」

 私が気落ちしたことに気づいてか、永人はそんなことを言う。

「岸、あんたねぇ……。婚約者候補とかじゃなくてもあの人達は聖良の護衛だったし、友達くらいの関係ではあったのよ? そう簡単に割り切れるわけないじゃない」

 嘉輪は呆れ気味に非難するけれど、永人の言葉は私を思ってのことだ。

 分かりづらい優しさだけれど、胸が温かくなるのを感じた。


「いいの、大丈夫だよ嘉輪。……永人も、ありがとね」

 私がそう言ったことで場は収まり、少し沈黙が落ちる。

「あー……じゃあさ、やっぱり岸は学園に来ない方が良いんじゃない?」

 嘉輪が話題を戻すように沈黙を破った。

「あんたは気にしなくても聖良が色々気を揉んじゃうみたいだし……。それに、あんたはあんたでやることあるんでしょう?」

「あー、まあ」

 嘉輪の言葉に永人はうんざりとした様子になる。


 嘉輪の言う通り永人は今城山学園敷地内にある大学の入学資格を得るために色々やっている。

 主に高卒認定資格の取得のための勉強だけれど。


 来年の大学入学は無理だけれど、私と一緒に大学に進むなら丁度いいからって。

 でも、その勉強がちょっと問題らしい。


「何? 勉強そんなに嫌なの?」

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