【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

閑話 忘れた想い

「それは事実か⁉」

「はい、純血種である朔夜様の確かなお言葉ですので、間違いはないかと」

 学園敷地内にある商業施設。
 その近くにあるホテルで俺は上層部の吸血鬼たちに前日聞いた話を報告していた。


「何と……始祖の復活とは……」

 実際には完全な復活ではないのだろうが、普通の吸血鬼にとっては始祖の力が使えるというだけで同じことなのだろう。

 皆が皆、喜色に満ちた表情をしている。


「しかもこの国から現れるとは……ヨーロッパ系の吸血鬼たちに一泡吹かせてやれるかも知れんな」

 あっはっは、と笑う一人に合わせるように他の者たちも笑う。


 吸血鬼の伝承はヨーロッパ系が有名なせいか、あちらの吸血鬼は少し他の国の吸血鬼を下に見ている節がある。

 その辺りに以前から不満を募らせていた彼らは、おそらく今回のことを大々的に知らせてマウントを取るつもりなのだろう。


 吸血鬼の伝承など調べれば世界中にあるというのに、くだらないことで勝ち負けを決めるものだなと呆れた。

 まあ、表情には出さないが。


「……だが、そうなるとその始祖様にもう“唯一”がいるというのが残念でならないな。いなければ是非とも私の孫を宛がいたかったが」

「何を言うか。お前の孫はまだ小学生だろう。俺の孫なら大学生だ、こっちの方が丁度良かろう」

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