【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「だから、最悪夜になれば逃げだすことも可能だと思ってたんだよ。まさかその前にあんなことになるとは思わなかったからな……」

「やっぱり、お前に託すんじゃなかった」

 悔し気に吐き出す俊君。

 でも、永人は非を認めつつもやっぱり態度は不敵だった。


「別にてめぇに託された覚えはねぇよ」

「なっ⁉」

「聖良は俺の女だ。守れなかったことを後悔してたってなぁ、他人にとやかく言われる筋合いはねぇ」

 非を自覚していても、それを責められていても周りは関係ないと言う。

 その後悔は、自分だけのものだと……。


「目の前で好きな女が死にかけるなんてなぁ……あんな思いは、もうごめんだ」

 苦々しく……ううん、いっそ憎々し気に言い捨てた永人に、俊君も言葉が出てこないみたいだった。


 沈黙が落ちてしばらく。

 浪岡君がポツリと言葉を紡いだ。


「じゃあ、聖良先輩のことはこれからもあなたが守る、と?」

「……当たり前ぇだ」

「聖良先輩の方が強くなったのに?」

「んなの関係あるか。自分の女を守るのに理由なんかいるかよ」

 当たり前のことを聞くなとばかりに吐き出す永人に、浪岡君は小さく息を吐いた。


< 640 / 741 >

この作品をシェア

pagetop