【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 でも言わなければこの状態がずっと続きそうな予感しかしない。


「……最後にって……抱きしめられただけっ、ちょっ」

「……へぇ」

 何とか言い終えると、また甘噛みされた。

 でも、声がワントーン低くなった気がする。


「聖良……お前さ、俺を嫉妬させてぇの?」

「え?」

 妖しさすらも感じる声に、永人の顔を見る。

 間近で見たその黒い目には、様々な欲が揺らめいている様に見えた。


「ダメだっつってんのに他の男と二人きりになるしよぉ……しかも抱きしめられておいて何もされてねぇなんてウソつくしよぉ……」

「そ、それはごめんなさい」

 私が悪いのは分かっているから素直に謝ったんだけれど、永人はそんな言葉だけでは許してくれなかった。


「言葉だけで済むと思うなよ?」

 妖しく揺らめく欲の炎を宿らせた瞳が、さらに近付いてくる。


 少しの怖さとキスを予感させる近さにドキドキと鼓動が速まった。

 触れるか触れないかの辺りで一度止まった唇が囁く。

「後で覚えてろっつったよな? 覚悟しろよ?」

「あっ、ぅんっ!」

 塞がれた唇にはすぐに舌が割り入ってくる。

 はじめから深い口づけに驚いて逃げてしまった私の舌は、絡め取られ吸い付かれてしまった。


「んっふぁっ」

 強引で、私の全てを奪うキス。

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