【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「……俺達は“唯一”同士。同じくらい互いを求めてる……」

 まだ永人の頭は首元に埋められていて、どんな表情で言っているのか分からない。

「そして俺は、お前の従者――お前のものだ」

「……」

 何が言いたいのか分からなくて黙って言葉を待つ。

 すると頭が上がって、その表情が見えた。


「でもお前が俺のものっていう印は消えてしまったからなぁ……」

 妖しく細められた漆黒の目。
 私に吸い付いたことで赤く熟れた果実のような唇はうっすら笑みの形になっている。

「またつけてやるよ。俺の所有印、執着の証を……たっぷりとなぁ?」

 その微笑みは鬼か悪魔のようにすら見える。


 でも、どうしてだろう。

 怖いと思うのに、私は喜びで震えている。

 ゾクリとした震えはその印を求めているかのようだった。


 ただ、欠片程度に残っている理性で一つだけ要望を伝える。

「……見えるところには、つけないで……」

「俺は見せつけてぇんだけど?」

「だめ……恥ずかしいから……」

 瞼を伏せて、少し視線をそらす。


 前までだったらキスマーク自体拒んでいたのに、どうしてつけて欲しいなんて思うんだろう。

 分からないけど、永人になら良いって思ったから……。


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