【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 一応外見が美少女らしいから、可愛いと言われることはたまにある。
 ……まあ、ほとんどお世辞だと思っていたけれど。

 でも綺麗なんて言われたことはないから、からかわれていると分かっていてもちょっと照れる。

「ふふ、バレちゃった?」

 おどけて言う弓月先輩にホッとする。

 ギクシャクした雰囲気にはもうならないと確信出来たから。


 そうやって二人で小さく笑い合ってから、弓月先輩は「でも」と口を開く。

「本当に今日はいつもより綺麗だと思うわ。見た瞬間にハッとしたもの」

「え?」

「見惚れてしまいそうなくらい綺麗で、そんな綺麗なあなたとまたこうして話せるようになりたいなって思うくらいに」

「そう、なんですか……?」


 そんな突然綺麗になるような何かをした覚えがなくて首を傾げる。

 すると私ではなく弓月先輩が一つの可能性に気付いた。


「ああ、聖良さんの上昇(じょうしょう)の月が今夜なのかしらね?」

「上昇の月?」

 聞いたことのない名称に言葉を繰り返して聞く。


「上昇の月っていうのは吸血鬼の力を上げる月夜のことよ。聞いたことないかしら? 吸血鬼は月の力でパワーアップするって」

「ああ、そう言えば……」

 以前、有香達とのお別れ会の準備中に聞いた気がする。

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