【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 心配そうな眼差しはそのままに、でも苦笑した様子は私の意志が揺るがないってことも分かっている表情だ。


 ふぅ、とため息をついた愛良は「分かった」と理解を示してくれた。

「そういうことなら、私も行く」

「え? でも……」

 月原家の人と会いたくないんじゃあ……。


「正直あの人達になんて会いたくもないけど、でも少なくとも私に手を出してくることはなくなったみたいだし」

 左手首にピッタリとはまっている零士の血の結晶を愛し気に撫でながら、愛良は続ける。

「それで今度はお姉ちゃんが、ってなったなら放っておけるわけないじゃない」

「愛良……」


 本当に、この姉思いの妹はいい子過ぎる。

 でも、正直嬉しかった。


 愛良の存在は、永人とはまた違った意味の心強さがあるから。


 ずっと守ってきた存在。

 そうすることで、愛良は私の心を守ってきてくれていた。


 無意識でも互いに支え合ってきた存在だから、揺るがない絆がある。


「……ありがとう。なんだかんだ言っても、愛良がいてくれると心強いよ」

 だから、正直な気持ちを伝えた。

「そう? そう言ってくれるなら私頑張っちゃうよ!」

 何をどう頑張るのか具体的なことは分からないけれど、両手を拳にする愛良を微笑ましく感じる。

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