【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 愛良の話では、連れ去って閉じ込めておくためにその薬を飲まされそうになったんだとか。


 愛良はまだ十五歳。

 子供を産めないわけではないけれど、本来なら若すぎる年齢だ。


 流石に月原家の人もリスクが多い状態で産ませようとは思っていなかったらしい。

 だから、せめて十六になるまではとにかく逃がさない様に閉じ込めるつもりだったのだとか。


 そのための、薬。


「その薬が効いている間だけ意識が朦朧として動けなくなるんだって説明された」

「……」

「依存性があるものでもないから大丈夫だとか言われたけれど、依存性が無ければいいってものじゃないでしょう?」

 怒り、嫌悪、不快。

 そんな感情が入り混じっているような表情に私はすぐには言葉が紡げない。


 話しながら愛良はずっと手首にある零士の血の結晶を撫でている。

 自分を支えてくれるその存在を確かめるように。


 そのおかげなのか、話しながらも怖がったり震えたりすることはない。


 何があってもそばで支えてくれる人がいる。

 その確かな存在を感じることで、強くいられるんだ。


 私も、永人を想った。

 その存在を思い浮かべるだけで、愛しさが胸に広がり心臓がトクトクと優しく脈打つ。

 自分の中の、一番深い場所を許した人。


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