【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 まあ確かに、勉強で分からないところは仕方ねぇから聞くし?
 この間聖良に教えた露天風呂の詳しい場所もこいつに聞いたし?

 利用できるものを使って何が悪い。

 鬼塚を利用するのと、俺が鬼塚を苦手に思っていることは別問題だ。


「無言とか。ま、利用しといてそれを否定までしてたらホントにクズだけどな」

 と、何が面白いのか笑う鬼塚。

 うんざりしてきた俺は大きくため息を吐いて肩に回された鬼塚の腕を外す。


「お前だって好意で勉強教えたりしてるわけじゃねぇだろうが。……詫びのつもりか?」
「……」

 今度は鬼塚が黙る番だった。

 後から聞いたが、一部のH生が聖良のことを襲った事件があったらしい。

 聞けば聞くほど腸が煮えくり返る。
 当事者であるH生達をすぐにでもひねり殺したくて仕方ない。

 同時に、そんなときに聖良の側にいられなかった自分自身にも嫌気がさす。

 当時の状況じゃあ無理なことは分かりきっているが、だからと言って悔しさや怒りが収まるはずもない。


 鬼塚は聖良を助けてくれた側だが、暴挙に出たH生と同じ古いハンターの家系の生徒だ。
 何かしら申し訳なく思っての行動かもしれない。

「……ま、否定はしないよ」

 微妙な笑みを浮かべた鬼塚は、「だが」と続ける。

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