【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「お前への詫びって言うよりは聖良への詫びかな? お前を助ければ、巡り巡って聖良の助けになるだろうから」

 そう言った鬼塚の表情は少し悲し気で、聖良を直接助けられないことをもどかしく思っている様子だった。


 ……気にくわねぇ。

 鬼塚のその様子に聖良への好意が見え隠れしていることに気付いてイライラする。

 本当に、聖良を想う男は俺だけで良いってのに。

 あいつの視界に、俺以外の男が入るんじゃねぇよ。


 何とも言えない焦燥が胸を焼く。

 聖良が見ている男は俺だけだって分かっているのに、聖良を好きな男が他にいるというだけで強い独占欲が沸き上がる。


 ……だが、鬼塚はまだマシなんだろう。

 聖良のそばから離れて、代わりに俺を詫びの対象にしているんだから。


 だから、俺もこいつを都合よく使えるとも言える。

 そこまで考えて少し冷静になった俺は今回も利用してみることを思いついた。

 まあ、役に立つかは分からねぇが。


「……じゃあ遠慮なく助けてもらおうか?」

「……なんだよ?」

 警戒する鬼塚に俺はわざと小ばかにするような笑みを向けた。


「お前さ、ハープとか薬草に詳しいか?」

「へ? あ、ああ……俺の家は昔からそういうの使って吸血鬼に対抗してたからな。ある程度の知識はあるぞ?」

「……マジで詳しいのかよ」

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