【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「そのため、君はこの国の出身なのだからってことを見た目からも分かるように和装しろと……」

「……」

 うん、田神先生は別に悪くないよ?
 上の指示に従っているだけだし。

 でもジトッとした目で見てしまうのは仕方ないよね?


「まあまあお姉ちゃん、振袖なんて中々着る機会無いんだし。それにこの振袖お姉ちゃんにとっても似合いそうだよ?」

 見かねてか、愛良がそうフォローを入れてくる。


 少し前は田神先生への当たりが強かった愛良。

 けれど、彼がちゃんと私に謝ってくれて私が信じると言ったからだろうか。

 態度が初めの頃の感じに戻っていた。


「まあ、そうだね……」

 ついこの間、上の指示に従っている田神先生に文句を言っても仕方がない、と愛良をたしなめたのは私の方だ。

 分かっているのにずっと非難するような目をしていても仕方がない。


 それに確かに着物を着る機会なんてほとんどないし、振袖なんて一、二回着るかどうかだ。

「でも着こなせるかな? 着物なんて七五三以来だよ?」

 言いながら掛けられている振袖を見てみる。

 着物の良し悪しなんて分からないけれど、絶対に高いものだってことは分かる。

 着こなせるかも分からないけれど、汚さないかの方が心配かも知れない。

「確かに聖良に似合いそうだな」

「そ、そう?」

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