【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 一緒に近くで見ていた永人の言葉にまんざらでもない気分になった。

 こんな豪華な着物が似合うと言われて素直に嬉しい。

 似合いそうだというなら、着たところを見せてあげたいと思う。


 でも、続いた彼の発言でその嬉しさも吹き飛んでしまった。

「これ着たお前を乱れさせてみてぇな」

「……永人、流石にそれは変態発言だからやめてくれない?」

 引きつる頬を抑えつつたしなめるけど、永人はどこ吹く風で……。


「俺は正直に思ったことを言っただけだぜぇ?」

 なんてニヤリと笑うから、つい足を思い切り踏んづけた。

「ってぇ⁉」

「調子に乗り過ぎない!」

 私の純粋な喜びを返せ!


 こんなことを言うのは私が何度もお預けを食らわせているせいだって分かってるけれど、それでも今のはちょっといただけない。

 痛がる永人からフンッと顔をそらすと、田神先生の顔が見えた。


 彼は何とも言えない微笑を浮かべている。

 口元は軽く笑っているのに、薄っすら開かれた目はまるで遠くを見ているかのようだった。

 なんて言うか……あれだ、仏像とかの表情に似ている。


「うっ……あの、その……」

 悟りを開かせてしまった状態に気まずい思いが沸き上がる。

 でも、田神先生は表情はそのままに口を開く。


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