【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「……まあ、とりあえずそれを着てくれ。当日はちゃんと着付けやメイクアップ出来る美容師も手配してあるから」

 そうして話を終わらせてしまった。


 ちょっと待って!
 せめて何か突っ込んで!

 行き場のない気まずさや恥ずかしさに内心叫ぶけれど、田神先生の心情を思うとうったえることも出来ない。


 結果、足を押さえてうずくまる永人の隣で気まずさと羞恥に耐えるため私もうずくまる。

「……似た者夫婦って感じだな」

 愛良しか見ていない零士が珍しくそんな感想を漏らしたけれど、「夫婦じゃないでしょ」と突っ込む気力はなかった。


***

 パーティー当日は朝から慌ただしかった。

 パーティー自体は夕方からだけど、まずは会場に行くために移動しなければならない。

 結構遠いみたいで、今晩はそこのホテルに泊まってくることになっている。


 菅野さんが運転するリムジンに私と愛良、永人と零士が乗って出発した。

 私達がリムジンに乗るとか本当にいいんだろうかと不安になったけれど、私と愛良は一緒が良いし、“唯一”を離すわけにもいかないからこれで行くしかないと説明された。

 まあ、乗用車だと誰が助手席に行くかでもめそうだしね……主に男二人が。

 でもわざわざリムジンにするあたり凄く特別扱いされている気がする……。


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