【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

「嘉輪⁉」


 状況に、すぐに月原家当主の伊織の関与を疑う。

 彼の姿を探したけれど、ぱっと見会場の中にはいない。

 もしかしたら何か会場に仕込んであったんじゃあ……。


 その考えが頭を()ぎると、零士も倒れてしまう。

「う……くそっ」

 悪態をつくけれど、体は動かせないみたいだった。


「聖良っ! 会場を出るぞ!」

 余裕なんて欠片もない様子で永人が私の腕を掴んで引く。

「で、でもみんながっ」

 一応引かれるままに足を動かしたけれど、みんなが――愛良が心配だった。


「心配しなくても多分大丈夫だ。これは月原家の薬だろうからな」

 私の腕を引き、倒れる人達を避けながら永人は説明してくれる。


「無味無臭で、意識が朦朧として動けなくなる便利な薬があるってのは聞いたことがある。思い通りにいかないやつを大人しくさせるのに使ってるってな」

「それって……」

 以前愛良に教えてもらった薬のことなんじゃあ。


 確か愛良は連れ去られた後、逃げ出さない様にその薬を飲まされそうになったと言っていたんじゃなかった?


「霧状にして相手に気付かれない様に吸い込ませることも出来ると言っていた気がする。多分今はそうやって――っく!」

 歩きながら永人にもその薬が効いてきてしまったんだろうか。

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