【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 ふらついて、そのまま倒れそうになるのをこらえていた。


「永人!」

 辛そうな永人を支えようとその背中に手を置いたと同時に、私もクラッと目の前が揺れる。

「あ……」

 永人を支えるどころか一緒に膝をついてしまう。

 もうすぐ出入口だというところで、私と永人は朦朧とする意識を保とうとするので精一杯だった。


「ッチ……効くか分からねぇが……」

 辛そうにしながらも永人はジャケットの内ポケットから何かを取り出す。

 小瓶に何かの液体が入っているのを見て、「これは?」と聞いた。

「確実なものじゃねぇが、鬼塚に協力してもらって中和剤を作ってみた。少しでも効けばいいんだが……」

 そうして小瓶の蓋を開けようとしたところで、目の前の出入り口のドアが開く。

 そこから入ってきたのは――。


「おや、出入り口まで来てくれていたとは……少し手間が省けましたね」

 先ほどと変わらず優しそうな笑みを浮かべていた伊織だった。


「くっ……てめぇ……」

 永人はサッと小瓶を隠し、睨みつける。
 けれど、伊織の表情は変わらない。

 この状況で笑みを浮かべられていることがすでにおかしいんだ。


「まだ睨む元気があるのかい?……ああ、そうか。今夜は君の上昇の月だったね。もう力が上がり始めているのか」

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