【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「ああ、あの女がシェリーだったのか。聖良さんを吸血して殺しかけた女……もっと痛めつけてやれば良かったな……」

 憎々し気に吐き捨てた田神先生だったけれど、伊織には冷静に返した。

「少々手こずったが、あの女は取り押さえた。月原伊織、お前も観念したらどうだ? 日本中の当主が集まるこのパーティーでこんな大掛かりなことをしたんだ。もう言い逃れは出来ないぞ?」

「まあ、この国にはいられないだろうね」

 伊織も冷静さを取り戻し淡々と告げる。

 それでも“唯一”であるシェリーが捕らえられたと聞いて多少は動揺しているようにも見えた。


「だが、始祖の再来である聖良さんを手に入れることが出来れば海外で隠れる場所はいくらでもある」

「……渡すと思うか?」

「そちらこそ守りきれると思っているのかい? まともに戦えそうなのは田神さん、あなただけのように見えるけれど?」

 ピリッと、空気が張り詰める。

 戦闘前の緊迫した空気に、私も息を呑んだ。


 シンと静まり返る中、先に動いたのはどちらだったのか。

 一対三の闘いが始まった。


 田神先生一人で大丈夫なんだろうか?

 心配になるけれど、彼と永人しか来ていないということは田神先生以外にまともに戦える人がいないんだろう。
 それか、こちらにまで来られない状況なのか。

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