【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 そんな老害達には、もっとハッキリとした形を見せつけなくてはならない。


 “唯一”という存在よりも彼らが重要視するのが血の契約。

 その血の契約である主従の契約ですら足りないというならば……。



「……永人、こちらへ」

 後ろに控えていた永人を呼び、隣に来てもらう。

「聖良……?」

 永人は私が何をするつもりなのか分からなくて戸惑っている。


 考えてみれば、こんな永人の表情は今しか見られないかもしれない。

 力が馴染んでいつもの私に戻ったら、きっと彼の態度もいつもの様子に戻ってしまうだろうから。

 そう思うと、このいつもよりちょっと可愛く見える永人の顔を観賞していたい気分になった。

 でも、その間ずっとみんなをひざまずかせておくわけにはいかない。

 私は名残惜し気に永人の表情を目に焼き付けると、先ほどから準備していたものを取り出した。


「っ! それは……」

 手のひらにコロンと転がった赤い結晶を見て、永人が驚きの声を出す。


 そう、これは私の血の結晶。

 普通の吸血鬼ならひと月はかかると言われる血の結晶だけれど、始祖の力があれば数分で作り出すことが出来た。


 私は永人を見上げて、イタズラをする前のように微笑む。

「せい――」

「永人、お返し」

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