【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 言い終えるとすぐに私は自分の血の結晶を口に含み、永人の胸倉を掴んで彼の口を塞いだ。


「っ⁉」

 驚きで見開かれた目が、ゆっくりと細められる。

 それを見届けて私は瞼を閉じた。


 永人の手が私の髪を撫で、腰に添えられる。

 抵抗するつもりなんてまるでないように、口が開かれた。

 そこに血の結晶を押し込むと、永人の舌が結晶ごと私の舌を絡めとる。


「んっ……」

 結晶を受け取って飲み込めばいいだけなのに、こんなときでも私を求めて奪おうとしてくる。

 それを嬉しいと思うあたり、私は本当に永人しか見えなくなっているのかも知れない。

 ちぅ、と舌を吸ってから私の血の結晶を嚥下(えんか)した永人は、名残惜し気に唇を離す。

 熱っぽい瞳に、トクンと心臓が跳ねた。


 このまま二人きりになりたい。


 そう思いかけるけれど、それはもう少しだけ待たなきゃならない。

 この場を終わらせなくては……。


 手だけはつないだ状態でゆっくり離れると、私はひざまずいている者達に語る。

「これで私達は互いの血の結晶を飲み交わした。彼は私のもので、私は彼のもの」

 これはもう主従の契約ではない。

 もっと、更に強いつながり。


「これは相愛の誓いである。何人たりとも引き離すことは許されない!」

 始祖として、そう宣言した。


『は!』

 大勢の了解の声が重なる。


 始祖としての宣言は、絶対のものとしてそれぞれの血に刻まれたのだった。
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