【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 仕方ないから、私は零士に口うるさいほど頼んだからね! と言い含めて愛良の部屋を出た。


***


「じゃあ永人、おやすみ」

 部屋の前まで来ると、私はずっとついて来てくれていた永人に向かってそう言った。

「……」

 でも永人は返事もせずスッと目を細める。

 不満を覚えていそうなその仕草に、私何かしたっけ? と疑問に思った。


「……おやすみ、じゃねぇよ」

「え?」

 低い声を出した永人は、私の肩を抱くようにしてそのまま部屋の中へ一緒に入ってしまう。

 そのまま後ろ手にドアを閉め、カチャリと鍵を掛けた。


 耳に届いたその音に、ドクンと心臓が大きく跳ねる。

 肩を抱く永人の手が熱い気がして、トクトクトクと心音が早まった。

 顎を掴まれ、上向かされる。

 電気もつけず薄暗い部屋の中、ギラつくような漆黒の瞳と目が合った。


「……今夜は、寝かせるつもりねぇから」

「あ……」

 その声音に確かな欲を感じて、ゾクリと体が震える。


 怖いわけじゃない。寒いわけでもない。

 むしろ、彼の視線や私に触れる手から熱が伝わって来たみたいで……熱い。


「二人きりで、ベッドもある。……そして時間もたっぷりあるしなぁ?」

「永人……」

「逃がさねぇよ」

「っ!」

 真剣な目と声が、更に私を昂らせる。


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