【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
いや、それよりも今日一日で否定しきれるんだろうか?
出来なかったら、明日からは来れないんだから噂は広まる一方なんじゃ……。
いやいや、でもそんないつまでもいなくなった人の噂なんてしてるほど皆暇じゃないよね⁉
と結論を出したけれど、今日一日否定し続けなければならないことは確実だった。
「ああもう、勘弁してよ……」
片手を額に当ててうなだれる。
すると忍野君が同情のこもった眼差しを私に向けて拳を突き出してきた。
「あー、とりあえずこれ食って元気出せ?」
顔を上げて手のひらを出すと、その上にコロンとふたつの飴が落とされた。
忍野君がいつもくれるべっ甲飴――ではなく、今日は珍しく甘いミルクの飴だった。
「良ければそいつにも」
と俊君に軽く視線を送る。
すると俊君は私の手から飴を一つつまんで「ありがとうございます」とお礼を言っていた。
「じゃあ今日は大変だろうけど頑張れ! 俺も出来るだけ皆に違ってたって言っておくから」
「ありがとう、お願いね!」
去って行く忍野君に期待の眼差しを存分に向けて、私達は自分の教室へと向かった。
でも私の廊下での否定の叫びはやっぱり教室内までは聞こえなかったみたいで……。
「あんた達付き合ってるって本当なの⁉」
教室に入った途端、有香に血走った目で詰め寄られた。