【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 は? 何? どうなったの?

 どうして一瞬前まで数メートル離れた場所にいた人間が今私達の目の前にいるの!?


 ただただ驚いた。

 どうして? と何度疑問を浮かべても答えなんか分かるわけがない。


 出来たことといえば、男を警戒して数歩後退りするくらいだ。


 そんな私達――いや、愛良に男は右手を差し出す。

 すると大真面目な顔でこう言った。


「お前は特別な血を持つ吸血鬼の花嫁だ」

「……」
「……」


 沈黙が落ちる。


 は? コイツ今何て言った?

 吸血鬼? 花嫁? 聞き間違いだよね?

 だって、そんな非現実的なことこんな真面目な顔して言う事じゃないもん。

「だから俺と一緒に来い」

 そんなこと言ったって愛良は渡さないよ!


 なんて思っていたら背後から近付いて来る足音が聞こえ、声が掛けられた。


「ストップ、零士(れいじ)。勝手なことばかりして先走るんじゃない」

 軽い口調だけれど、何となく威圧を感じる声音。

 家の前にいた男性の声だ。やっぱりこの二人知り合いだったんだ。


 って! まずい、挟まれた!
 逃げ場がないじゃない!


 愛良の手を掴んだまま焦り始めた私。

 そんな時、ガチャッという音がして聞きなれた声が後ろの方から掛けられた。


「あら? あなた達帰ってたの?」

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