【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 そんな私の席に真っ直ぐ歩いて来て、原田さんは躊躇いもなく頭を下げた。

「ごめんなさい!」

「え……?」

 突然過ぎて戸惑う私に、原田さんは顔だけを上げて隣の俊君をチラリと見る。


「彼と香月さんが付き合ってるなんて話を言いふらして、ごめんね。鈴木君の話だと、そういう風にしか聞こえなかったから……」

 申し訳なさそうに言い訳しつつ、彼女はもう一度頭を下げて謝ってくれた。


 謝罪の理由を聞いて、やっと理解する。
 誰かから噂は間違ってたって話を聞いて、慌てて謝りに来たって事だろう。


「……良いよ、分かってくれたなら」

 私は小さく息を吐いて原田さんを許した。


 悪い子じゃあ無いんだ。
 悪い事をしたと思ったら、こうしてちゃんと謝ってくれるし。


 それに、鈴木君の話を聞いただけなら確かに勘違いしてしまうかも、とも思ったから。

 昨日の俊君の態度を見ればそんな風に思ってしまうだろうし。

 勘違いを正す暇も無かったんだから仕方ないけれど……。


 そうやって思い返すと、一番の原因は俊君があんな態度をしたせいだと思う。
 いや、間違いなくそうだろう。

 恨みがましく俊君をジト目で見やる。


 でも彼は飄々とした笑みを浮かべるだけだった。

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