【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 そう叫びたくても、津波の様に押し寄せてくる質問に口を挟む余裕がない。

 しかも有香と同じ様に少し殺気立っている女子が数人いる。
 本気で怖い。

 この三日間で一番の騒がしさに、私はアワアワするしか出来なかった。


 ピルルルル

「……?」

 そんな騒ぎの中心で着信音が鳴り響く。
 最初は分からなかったけれど、何度か鳴れば気付く。

 だって、その音はすぐ隣の俊君の方から聞こえてきたんだから。


 周りは気付かず騒いでいるけれど、俊君は気にせず電話に出た。

 ……この騒ぎの中で聞こえるのかな? 電話の声。


 疑問に思ったけれど、相手がかなり大声で話している様でちゃんと聞こえているみたいだった。

「あ、零士? どうしたんだ?」

 電話の相手が零士だと分かって、私は何だか嫌な予感がした。

 昨日も愛良の護衛だった石井君から電話が来て、つけられてるって事を聞いた。


 でも、昨日の今日でまた同じような事が起こるわけないよね?

 まさかと思いながら俊君の様子を伺っていると、昨日と同じように眉間にシワを寄せる。
 ううん、昨日より厳しい表情だ。

 それは、嫌な予感が当たっていた事を意味する。


 サッと、私の表情も厳しいものに変わった。
 愛良に何かあったんだ。


「ああ、分かった。こっちもすぐに出る」

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