【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「俺は聖良先輩の護衛としてここに来てるんですよ? お別れ会とかに参加する為じゃない。そしてその俺が今すぐ帰らなきゃならないと言っているんだから、相応の事態が起こってるって予想出来ませんかね?」


 ビュオォーーー!

 と、効果音付きで吹雪が見えた気がした。


 表情は笑顔なのに、目だけが笑っていない。
 寧ろ氷の様に冷たい。

 その冷たさに凍らされたかの様にみんなは固まってしまった。


 すぐ隣にいた私も同様でピキッと凍ってしまう。


 俊君は周囲が黙った事をぐるりと見回して確認すると、氷像状態の私にいつも通りの笑顔を向けた。

「みんな分かってくれたみたいなので、早く行きましょう?」


 いや、分かってないと思うよ?
 これは明らかに俊君が威圧して黙らせただけだよね?


 とは思うものの、口には出せなかった。
 出てきたのは――。

「あ、うん。分かった……」

 という了承の言葉だけだった。

***


「あ、上履きとか持って帰らなきゃ」

 生徒玄関まで来てふと思い出す。


 凍ったままのみんなに「早退すること先生に言っておいてね」と言付けしてカバンだけを持って教室を出てきた。

 まだ固まっていたけれど、一応「うん」と返事があったから大丈夫だろう。


 そういえば体操着とかも置いたままだったな。


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