【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 どうしようかと少し悩んでいると、先に靴を履き替えていた俊君が「どうしたんですか?」と近付いてきた。


「あ、いや。体操着とか置いてきちゃったけど、どうしようかと思って」

「ああ、仕方ないですね。後で取りに来るか、誰かに持ってきて貰いましょう」

 悩むでもなくそう言った俊君はやはり焦っている様だった。
 早く学校から出たくて仕方がないという雰囲気が見て取れる。

 その様子から愛良が昨日以上に危険な目に遭っているんだと予想出来る。

 だから私は俊君の言葉に異を唱えることもせずただ「分かった」と頷いた。


 そうして校舎から出た私達。

 学校を出れば何があったのかを話してくれると思っていたのに、俊君はただ先を急ぐだけで何も言ってくれない。
 校門を過ぎても何かを言うそぶりすら見せない彼に痺れを切らし、私は半分叫ぶように訊いた。


「ねえ俊君! 何があったの? 愛良に何かあったんでしょう?」

 真面目に訊いたのに、俊君はいつもの調子で笑う。

「そんな必死になる程の事はありませんって。取りあえず家に帰りましょう? 帰ったら話しますから」

 大したことがないように振舞う俊君。
 そんなの嘘だってバレバレなのに。

 さっきの電話を受けた時の表情。
 明らかに焦っている様子。
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