【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
 それに今も、私が食い下がるのを防ぐかのように一息で最後まで言い切った。


 怒りが、湧いて来る。


 私は足を止め、静かに俊君を睨みつけた。

「聖良先輩?」

 俊君は振り返って、足を止めた私を非難するように見る。


「何があったか話してくれるまで、歩かないよ」

 決意を込めた私の言葉に俊君は溜息を返す。

「聖良先輩、わがまま言わないでくださいよ。とにかく急ぎましょう」

 そう言って私の腕を掴もうとする彼の手をパシリと振り払った。


 わがままを言う子供を諭すかの様な言い方。
 実際それとあまり変わらないのかもしれない。

 でも、このまま言いなりになるつもりなんてなかった。

 何の説明もないまま言う通りにするほど、私は俊君達を信用していないから。


「聖良先輩、お願いですから」

 困り果てたという顔をされても睨み続ける。

「歩いてくれないなら、抱き上げてでも連れていきますよ?」

 真面目に少し怒った調子で言われても更に強く睨み返す。


 無理矢理抱き上げて連れ帰ろうとなんかしたら、絶対信用してやらないんだから!


 更にそんな決意を込めて睨む。

 頭の少し冷静な部分で、今の私はきっと威嚇している猫みたいなんだろうなぁと思った。


 数秒の睨み合いの後、観念したのは俊君だった。

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