【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。
「はぁ……分かりましたよ。歩きながら話します」

 きっと無理矢理連れていくことも出来たんだろう。でもそれをせず話すことを選んでくれた俊君にホッとする。
 少しは信用してもいいかな、と思った。



 歩き始めると。

「まずは聞いても慌てないでくださいね」

 と前置きされた。


 焦ったり余裕のない態度でいたのは俊君でしょう。

 とツッコミたかったが、早く本題を聞きたい私は黙って頷いた。


「昼休みに入ってすぐ、愛良ちゃんの学校に不審者が侵入したそうです」
「え?」

 不審者と聞いて眉を寄せたが慌てたりはしない。
 不審者と一言で言っても色々ある。

 この場合学校の関係者以外が無許可で校内に入ればそれだけで不審者扱いになる。

 侵入した人が刃物を持っていて、生徒や先生を切りつけたなんてニュースを見たことがあるけれど、そんなのは本当に稀なケースだ。

 まさか、いくら何でも刃物を振り回す様な不審者が現れたわけじゃないだろう。

 その予想は当たっていた。
 当たっていたけれど……。


「迷いなく愛良ちゃんの教室まで来たそいつは明らかに愛良ちゃんを狙っていたそうです。当然零士が守ったし、他の生徒も不審者を足止めしてくれたらしいから学校からは逃げ出せたそうですけど」
「そんな……」

< 88 / 741 >

この作品をシェア

pagetop