元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

「……もし、そうだとしたら、先生は記憶がないふりをしているってこと?」

 アンナが神妙な顔で頷く。

「なんでかはわからないけど、レティには知られたくない何か理由があるんじゃないかって」

 ――私に知られたくない、理由……。
 ぎゅっと胸元で手を握る。

「それにユリウス先生、言うほどレティに冷たくないっていうか、むしろレティのことはやっぱり特別に思っている気がするの」
「え……?」

 アンナが私の手を指差す。

「その絆創膏もそうだけど。ほら、この間、私先生にレティをよろしくって言われたでしょう? あのとき、あぁ、先生は本気でレティのことを心配しているんだなって思ったの」

「でも……それは」
「だから! レティには遠慮せずにどんどんアタックして欲しいの。朝だって、誕生日をお祝いして欲しいだけって言ってたけど、もっと我儘でいいのよ。だって、前世からずっと想い続けているんでしょう?」
「……うん」

 セラスティアのことを思って強く頷くと、アンナは笑顔で続けた。

「レティがこのままぐいぐい行けば、先生もいつか折れるんじゃないかって。私もそんな先生が見てみたいし、だから私レティには頑張って欲しいの!」
「アンナ……本当にありがとう」
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