元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
第十七話
「誰よ! こんな陰湿なことするやつ!!」
アンナがテーブルの上にバンっと差出人不明のその手紙を置いた。
「絶対に犯人見つけ出して謝らせてやるわ! レティ、こんなの全然気にする必要ないんだからね!」
「うん……」
私は頷きながら再び折り畳まれたそれを見下ろす。
まるで血のように赤いインクと書き殴ったような乱雑な文字。
そこにはとてつもない怒りや恨みの感情が見て取れて、ただただショックだった。
「本当ならビリビリに破り捨ててしまいたいところだけど一応証拠だものね。……一体誰なのかしら……イザベラ?」
まるで小説に出てくる探偵のように口元に手を当てたアンナに私は慌てて首を振る。
「それはないよ。絶対」
「……そうよね、イザベラはこんな回りくどいことはしないものね」
イザベラはいつも真正面から正々堂々ぶつかってきた。それが良いことかどうかはさて置いて、彼女はこんな陰湿なことをするタイプではない。
それに、先ほど彼女が見せてくれた笑顔と「お互い頑張りましょう」という言葉を信じたい。
「なら他に誰がいたかしら、ラウルのことが好きな子……」
「やっぱり、ラウルの関係なのかな」
「決まってるわ」
アンナは断言するように言った。