元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
――それから数日が過ぎて。
「嘘でしょう? また?」
扉下に挟まった手紙を見下ろし、流石にうんざりするようにアンナがぼやいた。
あの日から例の差出人不明の手紙は届き続けていた。これでもう4日連続になる。
夜だけじゃない。今朝なんて支度を終え部屋を出ようと扉を開けたらひらり手紙が舞って危うく悲鳴を上げてしまうところだった。
内容は毎回同じようなもので。
目障り。
消えろ。
邪魔。
失せろ。
そしてやっぱりその文字は赤のインクで書かれている。
棚の上に置かれたこれまでの手紙の束を見てアンナが溜息を吐いた。
「レティ、このことユリウス先生には話してる?」
「ううん、まさか。先生は関係ないもの」
ユリウス先生の元へは相変わらず毎日通っているけれど、この件に関しては何も話していない。
「そろそろ相談してみたら? 何か対策を練ってくれるかも」
「うーん……でも、先生にはこういうことで迷惑はかけたくないなって思って」
「そう……。なら、やっぱりラウルに直接訊くしかないわね」
「え?」