元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
第ニ話
「引いてみる?」
その日の夜。
学生寮のルームメイトでもあるアンナがベッドに横になって悪戯っぽい目をこちらに向けていた。
「そう、よく言うじゃない。押してダメなら引いてみろって。レティこれまでほぼ毎日のように先生のとこ行ってるでしょう?」
「うん」
「だから、一旦引いてみるの。会いにいかないようにするのよ。そうしたら案外先生も、最近レティ来なくなったなぁって気になるかも」
アンナが一部声を低くして言うのを聞いて、私もベッドに横になりながら訊く。
「一旦ってどのくらい?」
「例えば、一月くらいとか」
「それはダメ!」
思わず声が大きくなってしまった。
(だって、一月したら誕生日が来てしまうもの)
と、アンナが目を丸くしていて慌てて謝罪すると彼女はクスクスと笑った。
「そんなに会いたいんだ」
(会いたいというか、思い出して欲しいんだけど)
「応援してるわ」
「ありがとう、アンナ」
続けておやすみと言おうとして。
「あ、そういえば、例の誘拐事件またあったらしいわよ」
「えっ」
不穏な話題にどきりとする。