元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
アンナは「決めた」とひとり頷いて続けた。
「あいつに心当たりを訊くのよ。そうすれば犯人を絞り込めるし。明日、早速訊いてみましょう!」
「で、でも……」
「あぁ、大丈夫よ。私が訊いてくるわ。レティは今下手にラウルに近づかない方がいいものね」
私がごめんねと謝るとアンナは笑顔で首を振った。
「さっさと犯人突き止めて、こんなこと早く止めさせましょう!」
「うん!」
――そして、次の日。
「ミス・クローチェ、何かありましたか?」
「え?」
昼休み、ユリウス先生の部屋でいつものように前世の話をしているときだ。
急にそう訊ねられて目を瞬く。
「今日はなんだか、心ここにあらずといったふうに見えましたので」
どきりとする。
実は今丁度アンナがラウルを呼び出し例の件を訊いてくれているはずなのだ。
「例の件、誰かに知られてしまいましたか?」
「え!? あ、いえ! それは大丈夫です!」
一瞬手紙のことかと思ったが、先生の言う例の件とは聖女の力のことやリュシアン様のことだろう。
でもそのとき先生の眼鏡のレンズがキラリと光った気がした。
「“それは”、ということは、何か別の件が大丈夫ではないということですね」
「うっ……」
――結局、ユリウス先生を誤魔化すことは出来ず、私は手紙の件を話すこととなった。