元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

「は、はい。それで、その人もラウルのことが好き過ぎてやってしまったんだと思うので、ちゃんと話して誤解だとわかれば止めてくれると」
「誤解だと思っているのは貴女だけです」
「え?」

 先生は厳しい目で私を見下ろした。

「貴女は“許婚”という関係を軽く考えているようですが、そう簡単に解消出来るものではないんですよ」
「で、でも、お互いそんな気全くないのに」
「ですから、そう思っているのは……いえ、今この話はやめましょう」

 スっと視線が外れて、先生は一度短く息を吐いた。

「とにかく、貴女が思うほどこの件は軽くありません。この間も言いましたが、僕には貴方方生徒を守る義務があります。この件はこちらでしっかり対処させてもらいます」

 有無を言わせぬ口調に折れかける。
 でも、扉に手を掛けた先生に私は言った。
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