元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
「何を笑っているんですか」
不機嫌そうに問われて私は慌てて顔を上げる。
「すみません。……実は、クラウスにもよく言われていたんです。『姫様は甘すぎます』って。そのことを思い出してしまって」
「……はぁ。そうですか」
先生は心底呆れたようにもう一度溜息を吐いて机の方へと戻っていった。
「もう授業が始まります。教室まで送っていきますので」
「え!?」
教材を手に取りながら言った先生にびっくりする。
「い、いえ、ひとりで大丈」
「送っていきます。丁度、この後隣の教室で授業なので」
ぽかんと口を開けている私の傍らをすり抜け、先生は扉を開けた。
「さぁ、行きますよ」
「は、はい!」
こんな時だけれど、先生と並んで教室まで歩けることが嬉しくて私は笑顔で返事をした。