元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
先日イザベラとも話した中庭の噴水前で私は目を瞬いた。
まだ核心に触れる前、「例の手紙のことなんだけど」と切り出した途端のことだった。
その大人しそうな子は酷く困惑した様子で私を見つめていて。
「え、えっと、この間私の部屋に手紙届けてくれたでしょう?」
そうやんわりとした言葉で訊くと、彼女は首を傾げた。
「先輩の部屋に、ですか? いいえ、私寮生ではないので先輩の部屋も知らないですし」
「!? ご、ごめんなさい! 私の勘違いだったみたい!」
私はそれから何度も頭を下げて謝った。
その子が軽く会釈して帰っていくのを見送ってから私はハァと溜息を吐く。
「悪いことしちゃったなぁ」
急に知らない先輩から呼び出されて、きっと不安だったに違いない。